ぱらぱらめくる『Quantum Probability and Spectral Analysis of Graphs』

Quantum Probability and Spectral Analysis of Graphs (Theoretical and Mathematical Physics)

Quantum Probability and Spectral Analysis of Graphs (Theoretical and Mathematical Physics)

目次

  • Preface
  • 1 Quantum Probability and Orthogonal Polynomials
  • 2 Adjacency Matrices
  • 3 Distance-Regular Graphs
  • 4 Homogeneous Trees
  • 5 Hamming Graphs
  • 6 Johnson Graphs
  • 7 Regular Graphs
  • 8 Comb Graphs and Star Graphs
  • 9 The Symmetric Group and Young Diagrams
  • 10 The Limit Shape of Young Diagrams
  • 11 Central Limit Theorem for the Plancherel Measures of the Symmetric Groups
  • 12 Deformation of Kerov's Central Limit Theorem
  • その他:Rでいじってみる

Preface

  • ベルヌーイ乱数を例にとって、その確率測度、モーメントの記述、代数的確率表現、ブラケット記法、確率変数に相当する行列の分解、そのグラフとの関係について概説し、本全体の章立ての説明をする
  • ベルヌーイ乱数Xとは、+1の値を取る確率が1/2、-1の値を取る確率が1/2であるような確率変数のこと
  • P(X=+1) = = P(X=-1)  = \frac{1}{2}のこと
  • これを、Xが取りうる値を実数直線全体でとらえなおすと、二つのデルタ関数 \delta_{-1},\delta_{+1}を使って、\mu = \frac{1}{2} \delta_{-1} + \frac{1}{2}\delta_{+1}と書くこともできる。これが「確率密度関数」であり、確率測度
  • この確率測度を使えば、m次モーメントはM_m(\mu) = \int_{-\infty}^{+\infty} x^m \mu(dx)と表せて、この値は、mが偶数のときに1、mが奇数のときに0となる
  • 確率変数は、モーメントが表現できれば、別の表現の仕方をしてもよいとされているので、行列を使って表現することにする
  • 天下り式にA=\begin{pmatrix} 0 \; 1 \\ 1\; 0 \end{pmatrix}, e_0 = \begin{pmatrix}0 \\ 1 \end{pmatrix}, e_1 = \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix}という行列と列ベクトルとを考えることにする
  • これらが、ベルヌーイ確率変数を表している、とはどういうことかというと、\langle e_0, A^m e_0\rangle = e_0^\dagger \cdot (A^m e_0)なる内積がmが偶数のときは1、mが奇数のときは0になるという意味で、m次モーメントになっているという点で「同じ」だから
  • さらに、このAを分解してみよう。A= A^+ + A^- = \begin{pmatrix} 0 \; 1 \\ 0 \; 0 \end{pmatrix} + \begin{pmatrix} 0 \; 0 \\ 1\; 0 \end{pmatrix}
    • このとき(A^+)^2 = 0, (A^-)^2 = 0, A^+ A^- = A^+, A^- A^+ = A^-であることに注意すると、\langle e_0, A^m e_0 \rangle = \langle e_0, (A^+ + A^-) ^m e_0 \rangle = \sum_{\epsilon_1,...,\epsilon_m \in \{\pm\}} \langle e_0, A^{\epsilon_m} ... A^{\epsilon_1} e_0 \rangleとなることもわかる
  • さて。このA,A^+,A^-e_0にm回作用するということと、その作用後のベクトルA^m e_0とオリジナルのベクトルe_0との内積を取るということを、グラフとして考えてみることにする
  • e_0というのは、グラフの1点。e_1というのもグラフの1点と見る。そのときA=\begin{pmatrix} 0 \; 1 \\ 1\; 0 \end{pmatrix}というのは、e_0,e_1を2点として、その間にエッジのある(無向グラフの)隣接行列となっている。そして、A^+は第1頂点から第2頂点への有向エッジ、A^-は第2頂点から第1頂点への有向エッジになっていて、2頂点からなる有向グラフの隣接行列でもある
  • さて、そのA^+だが、これをe_0に作用するとe_1になり、さらにA^+を作用すると\begin{pmatrix}0 \\ 0 \end{pmatrix}となり、2頂点のグラフから消えてしまう。はじめにA^+を作用し、次にA^-を作用するとe_0に戻ってくる。そういう意味で\langle e_0, A^m e_0 \ranglee_0を出発し、m歩で、e_0に帰ってくる歩き方の数になっている(A^+A^-とに相当するステップを交互に取るしか、グラフ上を歩くすべはなく、mが偶数なら、元に戻るし、mが奇数なら、別の頂点に到達している)
  • 以上が、とてもシンプルな例での、古典的確率変数、代数的確率表現、確率変数の行列表現とその分解、そのグラフとの対応とグラフ上の歩みの関係である

1 Quantum Probability and Orthogonal Polynomials

  • *-代数と、*-代数を複素数に対応付ける写像の組を考える。この写像\psi(a^*a) \ge 0かつ\psi(1_A) = 1のとき、この写像を「状態」と呼び、*-代数と状態とのペアが代数的確率空間を定める
  • 代数的確率空間を、(扱いやすいように)標準的な表現にする。単位ベクトルによって状態があらわされるように*-代数Aを変換することで、それがなされるので、(A ,\psi) \to (\pi D, w)と変換する。ただし、\piはAの要素に作用し、その結果、対応する、状態\psiは単位ベクトルwに対応することになり、Dがpre-Hilbertスペースになっているという。この標準化した表現はGelfand–Naimark–Segal(GNS)表現と呼ばれる
  • Prefaceで書いたベルヌーイ確率変数に対応するフェルミオン・フォック空間というものがある。それを拡張・一般化した考え方にInteracting Fock Probability spacesというものがある。それを理解するために、ヤコビ・シークエンスというものが出てきて、このあたりから、「状態数が有限か無限か」などが併せて扱えるようになるとともに、上げ下げ作用の大きさにも規則的な制約を入れたりする必要が出てくる(無限空間で遠くに大きい値を与えすぎると、『確率分布』としてうまくなくなることに対応)
  • また、測度空間を定めたとして、モーメントを計算できるのが代数的確率変数だが、モーメントの列は無限に続く。この無限に続くモーメント列にも、「ちゃんと有限状態数の空間でまともになるための条件」とか「ちゃんと無限状態数の空間でまともになるための条件」とかが明らかにされてくる。この条件はモーメントを要素とする行列のdeterminantの大小条件として説明されている
  • また、正規直交基底をなす多項式とかも使われる。
  • ちなみに、作用素行列は状態の上げ下げへと分解することはベルヌーイ変数で示したが、複雑な確率変数の状態空間を考えるときには、上げ下げでなく、同じ状態の割合を変えるような作用素もあって、それは、作用素行列の分解成分の「対角成分行列」として出てくる、などのことを知っておく必要がある

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2 Adjacency Matrices

  • グラフ、隣接行列、頂点の次数などの基本のおさらい
  • グラフの隣接行列のスペクトルと言えば、固有値とその重複度とで尽くされる
  • \lambda_1 < \lambda_2 < ... < \lambda_sw_1,w_2,...,w_s個ある、という情報のこと
  • この情報を確率測度的に\mu = \frac{1}{|V|} \sum_{i=1}^s w_i \delta_{\lambda_i}と書くと、s箇所に高さが重複度に対応するデルタ関数が立っているような関数としても表現できる
  • これを固有値分布とかスペクトルの分布とか呼ぶ。無限グラフなどの場合は、固有値とその重複度のペアであらわすより固有値分布で表すほうが便利
  • グラフには頂点集合があるから、その上に関数を定義することができる。その関数に内積を定義することで、この「グラフ頂点を台とする関数」はヒルベルト空間に配置される
  • グラフ頂点上にデルタ関数\delta_x(y)というのを定義することにする。これは、グラフのある頂点xに対して、自身に対して1を、非自身頂点に対して0を与えるような関数とする。こうすると\{\delta_x:x \in V\}なる関数の集合がでできるが、これは、先に作ったグラフの頂点集合を台とした関数のヒルベルト空間の正規直交基底になっている
  • このヒルベルト空間の部分空間であって、先の正規直交基底で張られた部分空間はpreヒルベルト空間(内積空間)になるという。ここにGNS表現が持ち込めて、この部分空間は線形作用素の*-代数になる
  • こんな感じで、どんなグラフ(無限グラフも含めて)も、その部分グラフに関して有限な*-代数があることになる。有限な部分グラフではどの頂点の次数も有限
  • 結局、グラフがあったら、その隣接行列は部分空間の*-代数(*-subalgebra)になっていて、A=A^*なので、この*-subalgebraの要素は隣接行列の多項式であらわされることになる
  • グラフが有限なら直径が有限となるが、その直径がnのとき、\{1=A^0,A,A^2,...,A^n\}なる隣接行列のn+1個のべき乗列は線形独立な*-代数の要素となり、*-代数の要素をこれらの線形式であらわすことができることになる
  • こうなれば、グラフの隣接行列について\langle A^m \rangle = \inf_{-\infty}^{+\infty} x^m \mu(dx)となるような\mu\langle \rangleに関するスペクトルの分布としたい
  • たとえば、グラフのある点o \in Vに対して、\langle a \rangle _o = \langle \delta_o, a \rangle \delta_oのように置けば(aはこのグラフの隣接行列の一つ)、\langle A^m \rangle _oっていうのは、点o \in Vから自身に戻るm歩の歩き方の通りの数になる。これを点oにおけるVacuum stateと呼ぶ
  • \langle A^m \rangle _{xy} = \langle x A^m y \rangle は点xから点yへのm歩の歩き方
  • 今、グラフの頂点に重み係数を乗せて、点oから各点へのm歩の歩き方の通りの数に頂点重みをかけて足し合わせる計算を考える。これはある点oを基準として、m=0,1,2,....歩の歩き方の場合の数の重み付き加算になる。これをdeformed vacuum stateと呼ぶらしい
  • 各点の「重みづけ」を点oとの関係(距離とか)を使ってパラメタ化するっていうのもやるらしい(q^{\partial(i,j)})のような感じで。これをカーネル(関数)と称する。このカーネルは頂点ペアごとに値が決まるので行列の形をしている。Qを用いて表す
  • そのうえで、A^kのdeterminant列を問題にするらしい
  • グラフの層化分解と隣接行列の分解。ある点からの距離を使うと、グラフのすべての点がdisjoint なサブセットに分けられる
  • 今、2点x,yとの関係は、ある点oからの距離を基準にして、\partial(o,x) = \partial(o,y)\partial(o,x) = \partial(o,y) + 1\partial(o,x) = \partial(o,y)-1かそのいずれでもないかの4通りに分けられる
  • 隣接行列の(x,y)成分の値が0のときは、気にしないとする。(x,y)成分が1のときに、A^o,A^+,A^-のどれか一つを1にして残りの2つの行列の成分は0にするように分解する。どれに1を与えるかは、\partial(o,x),\partial(o,y)の関係によることにする
  • これをグラフの隣接行列の量子分解という
  • 隣接代数についてはこちらに少しまとめ直しました
  • 有限グラフのスペクトル分布\muのm次モーメントについて\int_{-\infty}^{+\infty} x^m \mu(dx) = \frac{1}{|V|} Tr(A^m)が成り立つ

3 Distance-Regular Graphs

  • ベルヌーイ確率変数はとてもシンプルでグラフスペクトル的な扱いも単純であった
  • 同様に扱いやすいグラフから入るのが常道
  • その「代数的確率変数」という視点から、グラフの扱いやすさ( 漸近的に無限グラフが扱える、という意味で…と思われる)を表すと『Distance-Regular』という概念が登場するらしく、まずは、それを扱い、その例として、次章以降に具体的なDistance-Regular GraphsであるHomogeneous trees, Hamming graphs, Johnson graphs, odd graphsなどが具体的に論じられる
  • ということで、まずはDistance-Regularという概念の説明から入る
  • グラフの3点x,y,zを考える。\partial(x,y)=k(x,yの距離がk)であるとき、\partial(x,z)=iで、かつ、\partial(y,z)=jであるような点zがグラフにいくつあるかをp_{i,j}^kと表すことにする。Distance-regular グラフのIntersection数という
  • p_{i,j}^k = |\{z \in V | \partial(x,z) = i, \partial(y,z)=j\}(もしくはp_{i,j}^k = |\{z \in V | \partial(x,z) = i, \partial(y,z)=j\,\partial(x,y)=k\})とも表せる
  • このp_{i,j}^kはx,yの取り方によって一般には変わるが、それが一定であるようなグラフのことをdistance-regularと呼ぶことにする。これがdistance-regular graphの定義である
  • k-th 距離行列A_kというものを定める。行列要素は2点間の距離がkのときに、k-th 距離行列の要素値を1とし、それ以外を0とするもの。0-th距離行列は、単位行列、1-th(1st)距離行列はいわゆる隣接行列…
    • A_i A_j = \sum_{k=|i-j|}^{i+j} p_{ij}^k A_kという式が成り立ったりする
    • Distance-regular graphsの距離行列A_1によtって構成された*-代数は、k-th距離行列が張る線形空間でもある(ことは容易に確かめられる)
  • Distance-regular graphであることは、グラフのk-th距離行列が距離行列Aの多項式であらわせることと必要十分条件な関係にもある
  • 隣接行列による*-代数を考え、k-th距離行列が隣接行列の多項式であらわされることとを併せて、vacuume stateなどを扱うことができるし、そのスペクトル分布などを議論することもできる
  • k-th距離行列が作る*-代数には名前もついていてBose-Mesner 代数という
  • ここで\langle \delta_o, A^m \delta_o \rangle = \int_{-\infty}^{+\infty} x^m \mu(dx)を考えるとき(スペクトルを考えるとき)、w_\epsilon (x) = |\{y \in V_{n+\epsilon}; y \sim x\}|, \epsilon \in \{+,-,o\}が大事になるのだったが
  • w_\epsilon (x) = p_{1,n+\epsilon}^nなる関係になるという意味で、distance-regular グラフは隣接行列・隣接代数のスペクトル分解において特別な位置にあることがわかる

4 Homogeneous Trees

  • 自由群と関係するhomogeneous tree
    • p_{11}^0 =\kappa
    • p_{1,n}^{n-1} = \kappa -1, n = 2,3,...
    • p_{1,n-1}^n = 1, n= 1,2,3,...
    • p_{1,n}^n = 0, n=0,1,2,...
    • A = A^+ + A^-A^o = 0
  • たとえば、k=5のhomogeneous tree について\langle \delta_o, A^m \delta_o \rangle> = \frac{\kappa}{2\pi} \int_{-2\sqrt{\kappa -1}}^{+2\sqrt{\kappa-1}} x^m \frac{\sqrt{4(\kappa-1) - x^2}}{\kappa^2-x^2} dxという式が得られるという
  • このグラフがあらわしている測度分布(このグラフで点oからランダムに歩いて行って、m歩目に自身に帰ってくる歩きかたの場合の数をm次モーメントとしたとして、そのようなモーメント列を持つ測度分布)が\frac{\kappa}{2\pi}  x^m \frac{\sqrt{4(\kappa-1) - x^2}}{\kappa^2-x^2} だということが分かった、ということなのだろう
    • この分布をKesten 分布と言う
    • ベルヌーイ分布の場合には、モーメントが偶奇で0,1を交代するということがわかっていて、それに対する測度分布が\frac{1}{2} (\delta_{-1} + \delta{+1})である、ということに対応する

  • 頂点間距離に応じて要素値を決めて作る行列Q(カーネル行列)を加えることで、さらに、内積空間的に隣接代数・k-th距離行列代数などが表す世界が広がる
  • グラフ構造と、*-代数の行列(を量子分解したもの)と、カーネル行列とを使って、極限として\langle \Psi_0 (B^+ + B^-)^m \Psi_0 \rangle が得られるが、この代数的確率変数が取りうる状態空間を\Gammaとして(\Gamma, \{\Psi_n\},B^+,B^-)という四つ組を「(フリー)Fock space」と言う。この\Gammaは「不変量」なのだという
  • フォック空間は、グラフの階層化とも関係している。ある点を取り上げると、そこからの距離によってグラフの全ての点は階層的部分集合に分けられる。距離nの点がなす部分集合V_nに対して、\Psi_n = |V_n|^|-1/2} \sum_|x \in V_n} \delta_xとすると、これはいい感じの直交基底の特徴\langle \Psi_m, \Psi_n \rangle = \delta_{mn}という特徴を持つ。この基底が張る空間をグラフGの階層化に付随するフォック空間と呼ぶ

5 Hamming Graphs

  • ハミンググラフの定義としては、有限個の要素を持つ集合Fについて、そのd次デカルト積を要素とする。要素間の距離は要素のdペアについて、異なっている個数とする。それを実現したグラフがハミンググラフ
  • 組み合わせ論的にいろいろなことが調べられている

6 Johnson Graphs

  • 別のRegular graphsの例として、Johnson graphsとOdd graphsを扱う
  • どちらも、どんどん大きくするルールを有するグラフ
  • Johnson graphsには指数分布と幾何分布が関係づく
  • Odd graphsにはtwo-sided Rayleigh 分布が関係づく
  • Johnson graphsは、正の整数vとそれ以下の整数dとで決まるグラフ。\{1,2,...,v\}という集合の部分集合のうち、要素数がd個のものを対象とする。その対象とする部分集合を頂点とするグラフで、部分集合同士で1個だけ要素が違うとき、お互いに辺を引くというルール
  • Odd graphsはJohnson graphsに似ている。vに奇数 2k-1を定めることにする。集合\{1,2,...,2k-1\}の部分集合であって、要素数k-1のそれを頂点とする。エッジは、要素を共有していない場合に引く、と言うルール
  • このようにみてくると、古典的な確率分布は、何か、規則正しいグラフの隣接代数に紐づいた代数的確率変数となることが多いのではないか…と思えてきたりする

7 Regular Graphs

  • 条件を緩めよう
  • Distance-regularではなく、Regularなグラフ。すべての頂点の次数が等しいグラフ
  • Distance-regular graphsではInvariantが出てきた。これを漸近的なInvariantに緩める。Regular graphsではそうなる(らしい)
  • Growing (ルールを決めたらどんどん大きくできる)Regular graphsを考えることにする
  • Growingだから、その漸近的極限が議論できる
  • 整数格子はその例
  • その議論がうまくまわるためにはある3つの制約がある
  • その制約の下でのGrowing Regular Graphsについて漸近的不変量の議論がなされる

8 Comb Graphs and Star Graphs

  • Independenceという考え方に話を切り替える
  • Growing graphsを考える
  • そのうえで、林衛s津行列を複数の独立ランダム変数の和にできるような場合を扱う
  • 独立とは何かを定義しないと話が進まない
  • 古典的な確率変数の場合の独立はE(XYXXYXY) = E(X^4)E(Y^3)のようなもの。これは可換な確率変数の独立
  • いくつかの非古典的独立の定義がある
    • 期待値で定める独立性
      • 古典独立の場合、E[X^{p1}Y^{q1}X^{p2}...X^{pn}Y^{qn}] = E[X^{p1+...+pn}]E[Y^{q1+...+qn}]
      • ブール独立の場合、E[X^{p1}Y^{q1}X^{p2}...X^{pn}Y^{qn}] = E[X^{p1}]E[Y^{q1}]...E[X^{pn}]E[Y^{qn}]
      • 単調独立の場合、E[X^{p1}Y^{q1}X^{p2}...X^{pn}Y^{qn}] = E[X^{p1+...+pn}]E[Y^{q1}]E[Y^{q2}]...E[Y^{qn}]
      • 反単調独立の場合、E[X^{p1}Y^{q1}X^{p2}...X^{pn}Y^{qn}] = E[X^{p1}]E[X^{p2}]...E[X^{pn}]E[Y^{q1+...+qn}]
    • さらに、単項式X^p多項式にしても成り立つ
    • 自由独立性の場合は、簡単な式にならない
      • P_1(x),Q_1(x),...,P_n(x),Q_n(x) \in C[x]E[P_i(X)]=E[Q_i(Y)] = 0 (\forall 1 \le i \le n)を満たすならば、E[P_1(X)Q_1(Y)...P_n(X)Q_n(Y)] = 0
      • また、この定義により\forall P(x),Q(x) \in C[x]のとき、P(X)Q(Y)とが自由独立
      • ただし、C(X)多項式全体を表し、C(x)は関係式の無い単なる文字を現すものとする
      • なんでこんなことをやっているのか、見通しが悪いが、X,Yが自由独立な時に、それぞれの平均値が0となるように変数のシフトを行うと、それらについて、E[P(X)] =E[Q(Y)]=0隣、E[XY] = E[X]E[Y]となると言う、「独立っぽさ」が見えてくる、と言う、そんな定義になっているそうだ
  • 代数的確率変数の独立を考えるとき、確率変数をグラフと見るなら、グラフの積のようなものが登場するようだ
    • それぞれのグラフにある1点を原点としてとり、そこをグラフの積の原点として、組み合わせるような「積」を「★積」と呼ぶ
    • ある1つのグラフの原点を取り直して、そのグラフの全点を網羅し、それらについて★積をとったものと、隣接行列の積とに関係がある

9 The Symmetric Group and Young Diagrams

  • この章以降は対称群を代数的確率論・量子確率論的に扱い、その漸近的極限を考えるらしい(グラフ一般の話ではないので、自分の本来の興味から外れるので、パラパラめくるのはここまでとする)

10 The Limit Shape of Young Diagrams

11 Central Limit Theorem for the Plancherel Measures of the Symmetric Groups

12 Deformation of Kerov's Central Limit Theorem

その他:Rでいじってみる

量子力学と*-代数と状態

  • 代数的確率論をやっていると、それが量子確率論なのだが、物理との関連がわからなくなるので、ちょっとメモ
  • 量子力学では、物理量は行列であらわされる。その物理量の行列は*-代数の1要素である
  • 量子確率論・代数的確率論では、*-代数と状態関数のペアで考える。*-代数の要素に複素数を対応付ける写像が「状態関数」である
  • 状態関数は物理学でいうところの、「あるときある場所?の様子」に相当する
  • 物理量に対応する*-代数の要素をA^*とし、ある状態を\psiであらわすと、f(A^*,f) -> Cとなる
  • (物理の普通に考える物理量とその「観測値?」の場合には)、この状態関数\psiは、ある正方行列\rhoを対応させたうえで、Trace(\rho A^*)を計算したものになるということになっている。そして、これは、「物理量の期待値・平均値」になっている、という
  • Trace(\rho A^*)と書いたけれど、[tex:]というブラ・ケット記法にも対応するそう。ちなみに\psi波動関数(場所ごとに値が違う関数)

ぱらぱらめくる『量子確率論の基礎』

量子確率論の基礎 (数理情報科学シリーズ)

量子確率論の基礎 (数理情報科学シリーズ)

  • こちらで、この本の著者が同じ興味で書かれているらしいpdfをぱらぱらめくってメモをした
  • 重複が出てしまうので、この記事では、超うっすらとぱらぱらすることにする
  • 第1章は代数的確率空間の基礎。*-代数と状態について。そこに現れる代数的確率変数について。*-代数の大事な例である行列を取り上げ、行列代数と密度行列について
  • 第2章は、行列代数をヒルベルト空間上に作用する線形作用素と見ることができることを述べ、量子力学では物理量が作用素であることと繋いでいる
  • 第3章は、(多分)もっとも単純な例としてコイン投げと言う確率変数を取り上げ、それを代数的確率変数として扱うとはどう言うことかの説明をしつつ、それを量子力学でのフェルミオン・フォック確率空間として、物理の世界として説明している
  • 第4章は、量子調和振動子と言う、別の量子力学の基本的な題材での代数的確率の説明をしている。量子ブラウン運動とかポアソン型確率変数の代数的実現を扱い、代数的確率論の扱いにどんどん慣れることを求めている。量子力学では「ボゾン。フォック空間」のことだと言う
  • 第5章では、確率空間が独立である、と言うことの入り口として、可換な場合を扱う。整数格子上のランダムウォークがとりあげられる。この例は「独立性」をもつランダムウォークのもっとも考えやすい例として選ばれているらしい。図形的表現は多次元整数格子。
  • 第6章では、シングルトン条件と言うものを扱う。ちょっと、これの重要性がわからないままだし、どうしてここに配置されているのかもわからないままなのだが・・・(第7章で扱う自由独立性とシングルトン条件とが対応するかららしい)
  • 第7章では、自由群が作る等質樹木グラフにおけるランダムウォークを扱う。この例は、可換性の点で特徴的な例となっている。第5章が独立性、第7章が可換性の取り扱い、と言う対応関係らしい。この等質樹木上のランダムウォークのモーメント・密度行列がとても特徴的(らしい)。量子力学では「自由フォック空間」のことだとう言う。カタラン数(格子最短経路の数え上げと関連)と繋げて考えることもできる
  • 第8章は相互作用フォック確率空間について。第3、4、7章が、それぞれフェルミオン・フォック空間、ボゾン・フォック空間、自由フォック空間と言う相互作用フォック空間の中の特別なものだったので、多彩な量子の相互作用を扱う確率空間として、相互作用フォック空間を扱う、と言うこと。で表される量子力学の「なんだっけ、これ」に対して、フェルミオン、ボゾン、自由、たちは、綺麗な積分式が書けるわけだが、それらは、あるルール(ヤコビ数列)を使うと同じ形式に統一できて、ある確率測度のモーメント積分式にできる。そのうまい具合の分布をq-変形ガウス分布と言う。それらを合わせて行きましょうと言うこと。それがモーメントとして表せるし、そのこと自体が、「確率変数」として扱いますよ、と言うことのようだ。そしてモーメントを成分とする行列を考えたりする。さらに、直交多項式列が作れたりする。直交しているものが取れたら、それによって分解したくなる。それが量子分解。また、この過程で、作用素が行列として扱われ続ける。単純な設定なら単純な行列が、複雑な設定なら複雑な行列が現れる
  • 第9章はグラフとその隣接行列の漸近的スペクトル解析へと、代数的確率論を繋げる章
    • グラフには隣接行列がある。隣接行列はべき乗が計算できるし、そもそも、一般的に正方行列は*-代数として取り扱うことができるから、ここに、適当な状態を持ち込めば、隣接行列を代数的確率変数とした代数的確率空間ができる。特に、その実対称性から、古典的確率変数の代数的確率表現であることもわかる
    • 隣接行列の特徴として、グラフ距離が1である2点に対応する要素を1とする正方行列がいわゆる隣接行列であるが、それを、「距離が1である」ことに着目していることを強調して第一隣接行列と呼ぶことにすると、グラフ距離がiである2点に対する要素を1とする正方行列も作れて、第i隣接行列と言うようなものも扱えると言う
    • また、別の特徴として、A^kと言う第一隣接行列のk乗は、2点を結ぶ道の個数を要素とする行列であると言う特徴もある
    • さて。こんな隣接行列だが、量子力学で、作用素を生成・消滅と言う上がったり下がったりの作用の和で表すことを量子分解と言うけれど、それと同じように、ある2点の関係を、原点からの距離が近くなるのか遠くなるのか、同じなのかとで取り扱う、と言うことをしてやると、作用素が上げる作用素と下げる作用素とに分解できてくる。この辺りをグラフの特徴とか極限とかと結びつけてやると言うのがグラフのスペクトル分解との絡みになるらしい。ポセット構造の記述の一方法であると言い切って良さそうだ
    • この本では、扱っているのが、名の通ったグラフに関することであって、一般化していくと、収集がつかなくなるのか、何かあるのか、そのあたりまではよくわからない。
    • とはいえ、情報幾何と緩いながらも関係するとのあとがきの1文は興味深い

ぱらぱらめくる『非可換確率論における独立性と無限分解可能分布』

  • こちらのpdfを眺める
  • 1 非可換確率論(を読むと、大意は取れるようです…。大意が取れれば良いので、そこで終わりにするかもしれません)
    • 名前の由来
      • 量子力学では、物理量を非可換な作用素として扱う。消滅したり、生成したり、相互作用して変化したりが起きる。それを作用素の積で表現する。その記述に作用素のなす代数〜作用素環が用いられる
      • 量子力学における物理量(位置や運動量)は非可換であり、確率変数として定義される。したがって非可換確率変数と呼ぶ
      • 確率論的な非可換確率変数・非可換確率論の確率論的側面を強調したのが作用素環論
    • ランダム行列
      • 行列は積について非可換であり、行列成分を確率変数としたものは非可換確率変数としての好例になる。確率的な行列と言う意味で「ランダム行列」が研究される
      • ランダム行列は、原子核核子エネルギー準位の記述モデルとしての応用がある
      • 他方、Wishartによる統計・推定理論の側でもランダム行列は研究が始まった。半正定値行列〜分散共分散行列の性質を満たしつつ、ランダムな行列
      • それ以外にも多彩な応用分野があるが、共通して重要なのは、固有値が確率的にどのように分布しているかを調べることが大事であること
    • 自由確率論
      • いわゆる普通の確率変数が2つあって独立な時、可換なので、その期待値の計算は簡単だが、非可換だと簡単にならなくて、ごちゃごちゃしてくる。そんなごちゃごちゃした計算をしないといけない複数の非可換確率変数が独立か非独立かを考えるには、普通の「独立のルール」では判断ができない。それを「自由独立性」と呼び、それを論じるのが「自由確率論」。ちなみに、この自由確率論は、群や代数の自由積と相性が良いので、自由確率論との呼び名がある。
      • 独立性。独立であると言うことを、期待値・モーメントの具合で定めようとするのが古典確率論・代数的確率論の方針だが、そうすると「混合モーメントの計算規則」が「種々の独立性」を定めることと言い換えることができる。その線に沿っていくと、古典独立性、代数的確率論の自由独立性、ブール独立性、単調独立性があることが知られている。
    • 確率論のアナロジー
      • 独立性の定義を変えることで、古典的確率論がその他の確率論に変わる。そうすると、古典的確率論がもつ、色々な要素(フーリエ変換(特性関数)、確率分布のたたみ込み、中心極限定理、Poissonの少数の法則、無限分解可能性、Levy過程、確率積分エントロピーなどの、「その他の確率論用のアナロジー」が定義される。
    • ランダム行列と自由確率論
      • 自由確率論はランダム行列の固有値解析に応用できりることが知られている
      • 漸近的自由な複数のランダム行列の多項式固有値分布を数値的に調べるアルゴリズムなども、ここから導かれているらしい
      • 量子情報理論への応用も活発
    • 他分野への影響
      • 量子群、コクセター群、対称群、ヤング図形、Levy過程上の確率積分、グラフの積演算と隣接行列の関係、グラフの隣接行列のスペクトルの漸近的解析
  • 2 古典確率論とモーメント
    • モーメントは確率変数Xのn乗ごとに定まっていて、二つの古典独立な確率変数の場合、 XよYとのモーメントに分解して計算できることが知られている
    • (X+Y)のモーメントもXのモーメントとYのモーメントに分離した多項式になるし、X+Yの積率母関数が2つの確率変数の積率母関数の積となると言うような関係になっている
  • 3非可換確率論
    • 期待値で定める独立性
      • 古典独立の場合、E[X^{p1}Y^{q1}X^{p2}...X^{pn}Y^{qn}] = E[X^{p1+...+pn}]E[Y^{q1+...+qn}]
      • ブール独立の場合、E[X^{p1}Y^{q1}X^{p2}...X^{pn}Y^{qn}] = E[X^{p1}]E[Y^{q1}]...E[X^{pn}]E[Y^{qn}]
      • 単調独立の場合、E[X^{p1}Y^{q1}X^{p2}...X^{pn}Y^{qn}] = E[X^{p1+...+pn}]E[Y^{q1}]E[Y^{q2}]...E[Y^{qn}]
      • 反単調独立の場合、E[X^{p1}Y^{q1}X^{p2}...X^{pn}Y^{qn}] = E[X^{p1}]E[X^{p2}]...E[X^{pn}]E[Y^{q1+...+qn}]
    • さらに、単項式X^p多項式にしても成り立つ
    • 自由独立性の場合は、簡単な式にならない
      • P_1(x),Q_1(x),...,P_n(x),Q_n(x) \in C[x]E[P_i(X)]=E[Q_i(Y)] = 0 (\forall 1 \le i \le n)を満たすならば、E[P_1(X)Q_1(Y)...P_n(X)Q_n(Y)] = 0
      • また、この定義により\forall P(x),Q(x) \in C[x]のとき、P(X)Q(Y)とが自由独立
      • ただし、C(X)多項式全体を表し、C(x)は関係式の無い単なる文字を現すものとする
      • なんでこんなことをやっているのか、見通しが悪いが、X,Yが自由独立な時に、それぞれの平均値が0となるように変数のシフトを行うと、それらについて、E[P(X)] =E[Q(Y)]=0となり、E[XY] = E[X]E[Y]となると言う、「独立っぽさ」が見えてくる、と言う、そんな定義になっているそうだ

密度行列、トレース、確率

  • 昨日に引き続き代数的確率論
  • 代数的確率論では、エルミート行列が実確率変数に対応する、という話がある
  • 有名な例としてパウリ行列\begin{pmatrix}1\ 0 \\ 0 \ 1 \end{pmatrix}, \begin{pmatrix}0\ 1 \\ 1 \ 0 \end{pmatrix},\begin{pmatrix}0\ -i \\ i \ 0 \end{pmatrix},\begin{pmatrix}1\ 0 \\ 0 \ -1 \end{pmatrix}の線形和としてエルミート行列を作る、というものがある
  • このような確率変数があったときに、この確率変数がある状態を取っているときに、それは、純粋状態の混成になっていると量子力学では考える。純粋状態には確率があり、それの総和が1となる
  • この「状態」は、代数的確率論では、代数的確率空間を、*-代数と状態とのペアで表すが、そこで言う状態である
  • 今、エルミート正方行列を*-代数とする確率空間の状態は、正定値行列と1対1対応することが知られており、それを\rhoとすると、この確率変数のこの状態における「期待値」はTr(\rho a)、ただしaは確率変数に対応するエルミート行列
    • この\rhoは行列であって、代数的確率変数の状態を表現しているものである。そして、正定値行列であり、かつ、トレースが1(固有値の和が1)と言う条件を満たしている。これを、密度行列と言う
  • 一方、ある状態にあったときに、何かしらの物理量を観察するとしたときの、その物理量の期待値、というのも量子力学では大事
  • この物理量がやはり、行列で表されて、この行列の期待値は、今度は、先ほどの状態行列をブラとケットとに(?)分解したものでサンドイッチして計算する、という話がある
  • 量子力学の勉強を始めると、物理量の観測期待値の話と状態ベクトルとの話しが先に出てくるの対して
  • 代数的確率論の方では、確率変数(*-代数の要素)と状態を表す行列のペアという話が出てきたので(多分、それが原因だと思い込んでいるのだが)
  • こんがらがった。ので、この記事をメモする


量子確率論の基礎 (数理情報科学シリーズ)

量子確率論の基礎 (数理情報科学シリーズ)

隣接行列は代数的確率変数である

  • 量子確率論とその応用と言うpdfを読んでいる
  • 確率変数を*-代数と状態と呼ばれる関数とのペアとして表現する話であり、量子力学で使われてきているらしい
  • それをグラフに応用することができる
  • こちらに、冒頭のpdfの前半についてメモをした。代数的確率論とその量子力学とのつがなりについての部分である
  • 今日の記事では、そのpdfの後半であるグラフ理論への応用についてメモする
  • グラフでは隣接行列が大事である
  • そのグラフの隣接行列が生成する*-代数があると言う
  • それは何を意味するかと言うと、『グラフは代数的確率変数』として扱うことができる、と言うことである
  • このことにより、グラフ〜代数的確率変数に量子確率論を結び付け、その視点や手法(例えば量子分解)が使えるのだと言う
  • なお、グラフの隣接行列を用いて、グラフの特徴づけをする手法にグラフ・スペクトル理論と言うものがある
  • これは、隣接行列の固有値スペクトルを使う、と言うことで、(無向グラフの場合には、n(n-1)/2の情報をn個の固有値にまで、情報を落とすことに相当する
  • 代数的確率論では、確率変数をモーメントで表して、「同値性」を扱うので、n個まで情報が落ちずに済む(済みそう)
  • また、グラフは各頂点から何歩で行き着けるかによって、全てのノードを階層構造として扱うことができるが、この階層構造に代数的確率論での量子分解が使えると言う