診断・予後予測

  • 診断と予後予測に関する3つの話題
    • 判断の支援
      • 判断の支援と情報
      • 事前確率・事後確率、ベイズの定理
    • 因 と 果 とをつなぐ
      • 射影して情報が劣化する
      • 情報の次元
    • 微分積分
      • 線形ではない予測のために
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  • 診断とは、個人の状態に「診断名」というカテゴリカルラベルを貼ることである
    • その目的は、「診断名」を付与することによって
      • その予後予測の範囲が狭まり
      • その後の治療方針・経過観察方針に関する決断を助ける事前確率を与えることである
  • 予後予測とは、疾病フェノタイプを持つ個人に関して、その疾病が、ある状態にあるものが、ある時間経過後に、どういう状態にあるかを予測することである
  • シンプルな枠組み
    • 因子Xを持つか持たないかにより、フェノタイプがYからZに変化する確率が異なるとき、Xは予後予測の因子として機能する
    • YからZに変化する確率がXの有無によって、「十分に差がある」ときに有意義である
    • 「十分に差がある」「有意義」であることの定義は、予後予測をする人(される人)によって定められる
  • 予後予測したいフェノタイプは一つではない
    • 関節リウマチの場合
      • 炎症症状それ自体
      • 軟骨の破壊・喪失
      • 骨の脆弱化・破壊・骨折
    • 異なるフェノタイプは(さすがに同一の疾患に同席するフェノタイプであるから)、相互に関係が強いが、その方向が完全に同じではないし、背景となる病的プロセスがどのようにフェノタイプ発現に寄与するかの様態も一つではない
    • 一つではないということは、予後予測自体もそれに合わせて実施する必要があり、「合せて」実施するためには、「どうやって合わせるのか」についての情報がなくてはならない
  • 射影的に考える
    • 遺伝因子という空間を1次元、それが影響を与える分子のレベルのフェノタイプが1次元、それらが積み重なってフェノタイプとして現れるときに、フェノタイプも1次元で考えるとすれば、2段階の両方で1対1対応がとれていれば、予後予測は完璧。そこが崩れれば崩れるほど予後予測は当てにならない
    • 遺伝因子層・分子ネットワーク層・フェノタイプ層のそれぞれの次元は、実際は高次
    • そのことを考える工夫
  • 微分積分的に考える
    • 予後予測には、現時点がある
    • 現時点では、「現在状態」が測定できる
    • 現時点では、「状態の微分の現在量」が測定できる(かもしれない)
    • さらに情報量を増やすには、「現在状態」と「ちょっと前の状態」とを観測して、その差分を取ることで、微分の代用もできるかもしれない
    • 1階の微分、2階、3階…
    • さらには、ちょっと、介入(治療とか)を試した上で、「状態変化」や「微分の変化」を観察することもできる
    • 微分の情報を、1次線形で外挿するのでよければ、これは予後予測に他ならない
    • 問題は、1次線形で外挿できないときのこと
    • 1次線形で外挿できないとなれば、「現在状態」と「現在の微分」だけがわかっても、予後予測はできない
    • そのために、高階の微分を考えたり、介入して、その反応のパターン認識をして予後予測する可能性を考える
    • 遺伝要因が、高階の微分についての情報や、反応パターンに関する情報を与えてくれるとしたら、それは予後予測に役にたつ可能性を持っているということになる