スタチン投与量戦略

  • シンバスタチン(その他のスタチンと薬剤代謝が違うので特に)はスタチン関連ミオパチーのリスクが高いとされている
  • (シンバ)スタチン関連ミオパチーの遺伝的リスクとしては、SLCO1B1上のSNPが知られている
  • 最近、ACC/AHAからアテローム硬化性心血管リスク低減のための血中コレステロール治療ガイドラインが発表されたので、スタチン関連ミオパチーのPharmacogenetics的個別化がどのように扱われているのかを確認してみた
  • ACC/AHAガイドラインこちら
    • その中で、Pharmacogenetic testingは"Future Updates to the Blood Cholesterol Guideline"の一つとして位置付けられている(Table3の末尾)
    • FDAによるシンバスタチン関連ミオパチーに関する通知(FDA Drug Safety Communication)はこちらにあるが、GWAS等のスタディを受けて、ドース依存的に高まるミオパチーリスクに鑑み、高用量(80mg)からの開始はしないように、と述べ、その他のリスク上昇因子の一つとして、SNPに言及している
      • "Approximately 60% of the cases of myopathy were associated with a genetic variant which affects the coding of the transporter responsible for simvastatin uptake into the liver. This variant increases the plasma concentration of simvastatin, thus increasing the risk of myopathy. "
    • このFDAの通知は、ACC/AHAガイドラインでは、シンバスタチン投与量の決定に関して言及する部分にて引用されている(Table 5)が、遺伝子多型との関連がACC/AHAガイドライン内には出てきていない。
    • また、それを実践するために必要なpharmacogenetic testingの方法等は明記されていない
  • なお、(シンバ)スタチン・ミオパチーのSLCO1B1のSNPについては、こちらで次のようなpharmacogenetic testingの利用が推奨されていますが、その根拠はそれほど強くないようです
    • 推奨
      • 80mg(高用量)はリスクの低いホモの人であって、すでに継続使用して安全であった人に限定することを原則とする
      • 40mg(中用量)、20mg(低用量)もそれぞれ、併用薬の具合によっては服用しないことが望ましい
      • 40mgを服用することを考慮する場合には、SNPタイピングをして、リスクホモ、ヘテロでは低用量・他薬併用、他スタチンが推奨される
    • 根拠
      • 2008年のNEJMペイパーで、definit myopathy(CK>正常上限x10)が、3ジェノタイプ別人数として12,15,14人、incipient myopath(上記に満たない上昇)が、17/20/7 人であったという。これを、コントロール群の70/17/3と比較したところ
        • definite myopathyでは、リスクホモのノンリスクホモに対するORが27.22(95%CI 6.79-109.21)、ヘテロのノンリスクホモに対するORが5.29(95%CI 1.27-22.04)
        • incipient myopathでは、それぞれ、9.61(95%CI 2.25-41.07)、1.98(95%CI 0.44-8.88)
      • それ以外にいくつかのペイパーがこちらでは引用されているが、そもそも3ジェノタイプのカウントがなかったり…と、正確な評価はしにくい状況