Metric tensor と Permutation tensorとクロネッカーのデルタ



若干、話しの方向を変える。

  • ベクトル空間中のベクトルの間には、(1) 距離 という関係と (2) 相互の作る角 という関係が重要である。あるベクトル空間を考え、そのベクトル空間のテンソルを張る外積空間とを考える。ベクトル空間を張る正規直交基底があり、それらが作る外積ベクトルとがあるとする。定義からベクトル空間の正規直交基底は、原点からの距離が1で、相互のなす角が直角である。これらから作られる外積空間の正規直交基底となっている。
  • 今、あるベクトル空間を張っている基底を考える。正規直交基底ではないので、基底はその原点からの距離も1とは限らないし、基底同士のなす角も直角とは限らない。この非正規直交基底の原点からの距離や相互のなす角を知るときには、それらを正規直交基底の線形和に分解してやることが基本的なこともわかるだろう。作業としては、(1) 長さを計算する (2) 角度を決める、という手続きが賢そうである
    • 長さの計算に関しての情報をもたらすテンソルがMetric tensor
    • 角度に関する情報をもたらすテンソルがPermutation tensor
    • 2次元ベクトルでのアナロジーとしては、Metric tensorに相当する計算は内積、Permutation tensorに相当する計算は外積
      • 内積は、ベクトル1の長さxベクトル2の長さxベクトル間角度のコサイン(スカラー)
      • 外積は、ベクトル1の長さxベクトル2の長さxベクトル間角度のサインをスカラー量とし、ベクトル1とベクトル2の両方と直交するベクトル
    • 長さとは
      • 今、長さを測る、として、空間中の距離であるかのように、説明をしたが、実は、『長さ』とは、空間中に定義されているスカラーで現される量であって、測り方によって変わらないもの、と見ることもできる。
        • この定義のもとでは、(a1,a2,a3,a4),(b1,b2,b3,b4)の間に定義されて、この2つから得られるスカラー量であって、測り方によって変わらない(基底変換によって変わらない)量は、a1b1+a2b2+a3b3+a4b4があるし、-a1b1+a2b2+a3b3+a4b4もある。前者は4項の足し算になっており、4次元幾何学空間での距離であり、後者は、第1項が負であとは正。これは、相対性理論で、時間(第1変数)とその他の空間3次元とを別扱いにしたうえでの、2点間の時間を含む4次元時空間での距離を与えるものである。
      • このように、ベクトル空間中で「長さ」の定義は『2つのベクトルから計算される量』で、『スカラー』『座標によらず一定』という条件で、さまざまに定義できる。これは、2ベクトルを引数としてとる関数で、スカラー量を返すもの、ただし、座標変換によって不変、とも言い換えられる。このような関数を「内積」(内積的計算をする関数)と言う。n次元ベクトル空間の内積関数は、2階、n次元、2^n要素のテンソルになっている。n次元ベクトルA(横)とnxn行列(2階、n次元テンソル)とn次元ベクトル(縦)を計算すると、スカラー量が変えるのに相当する。nxn行列が対角成分1で残りが0であるとき、この「内積(的計算をする関数)」はa1b1+a2b2+a3b3+a4b4となっていることからもわかる。この内積関数は、Metric tensorと呼ばれる。Metric tensorは後述のようにクロネッカーのデルタを用いて簡単に表される。対角成分の第1番目を-1とし、残りの対角成分を1とすれば、このタイプの計算では-a1b1+a2b2+a3b3+a4b4となっていて、これは相対性理論での時空間距離に相当する
  • クロネッカーのデルタは
    • ¥delta_{ij}=1 for i¥not = j
    • ¥delta_{ij}=1 for i = j
  • 直交系のとき、Metric tensorクロネッカーのデルタそのものである
    • g_{ik}g^{ij}=¥delta_{k}^{j}
    • 引数として、ベクトル(階数1)を2つ取り、返り値として、スカラー(階数0)を返しているから、この関数テンソルの階数は2。
  • Permutation tensor は:
    • Permutation によって与えられる値を次のように定義する
      • ¥[¥alpha,¥beta,¥cdots,¥mu¥] = 1(引数の入れ替え回数が偶数回のとき)
      • ¥[¥alpha,¥beta,¥cdots,¥mu¥] = -1(引数の入れ替え回数が奇数回のとき)
      • ¥[¥alpha,¥beta,¥cdots,¥mu¥] = 0(引数に同じ引数が2度以上あるとき)
    • また、Metric tensorから算出される次の値を用いる
      • g¥equiv det{g_{¥alpha¥beta}}
    • Permutation tensor の要素は
      • ¥epsilon_{¥alpha¥beta¥cdots¥mu}=¥sqrt{|g|}¥[¥alpha,¥beta,¥cdots,¥mu¥]
      • ¥epsilon^{¥alpha¥beta¥cdots¥mu}=¥frac{1}{¥sqrt{|g|}}¥[¥alpha,¥beta,¥cdots,¥mu¥]
    • Permutation tensorに与えられているのは、階数1のベクトル1つのように見えるが、実は、与えたベクトルの値の並びを、「基準となる階数1、同次元のベクトル」と比較して、それとの間での交換回数(階数0、スカラー)を返り値として返しているから、やはり、引数は階数1のベクトルを2つで、関数テンソルの階数は、2+0=2。
    • Permutation tensorによる外積表現
      • 外積は、2つのn次元ベクトルを引数として、その2ベクトルに直行するn次元ベクトルを返す関数である。引数側の階数の和が2、返り値側のそれが1であるから、この関数を定義するテンソルの回数は3((¥eplison_{ijk})。返り値ベクトルの添字の値をi、引数ベクトルの添字の値をそれぞれ、j,kとして次のような関係にある
        • ¥epsilon_{ijk} ¥times a_j b_k