駆け足で読む『組みひもの数理』

大学教養・高校数学オリンピック向けの講義・セミナーを下敷きにした組みひもの話。
群とか、わからなくても、どういう方向でひもの話を抽象化したいのか、ということを理解するのにとてもよい。
ひもや紙などを実際にいじりながら読むと特にわかりやすいと思います。

  • 第1話 アルティンの組みひも群
    • Braid group
    • Wiki
    • 隣接するひもの交換、ただし上下の重なり(男前か女前か)の区別つき
    • 非対称群
      • 単位元あり
      • 結合法則あり
      • 逆元あり
      • 2本の組みひもの場合は、対称群だが、3本以上は非対称群
    • あみだくじはn本の並び方を入れ替える。n!通り
    • 組みひも群は、並び方の入れ替えにあたって、重ね方(男前か女前か)を区別する分、場合が増える
    • 組みひも関係式
      • \sigma_i \sigma_{i+1} \sigma_i = \sigma_{i+1} \sigma_i \sigma_{i+1}
      • \sigma_i \sigma_j= \sigma_j \sigma_i, |i-j| >1
    • 交叉・組み換えは組みひも的なこと。\sigma_i \sigma_i^{-1}ではなくて、\sigma_i \sigma_iのように、なっているのか・・・(こちらの図を以下に示す…)

http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/4/45/Morgan_crossover_2.jpg/800px-Morgan_crossover_2.jpg

    • こうなっていれば、極体が引っ張れば、必然的に、モザイクができそう。絡んでいるから。もし、\sigma_i \sigma_i^{-1}だと、するりとほどけてしまって、モザイクにならないだろう
    • コアレセントグラフは、塩基に関する木の透視図(重ね合わせ図)。これは、「組みひも」じゃなくて、「樹状物の組みひも様」とでもなるか…。「樹状物があみだくじ的に交換している(男前・女前を無視)様」とでもなるか…。すると、この「樹状物」には、「群」がある?それとも、別の演算ルールがある?
  • 第2話 リンクダイアグラムとライデマイスター移動
    • リンクダイアグラム
      • リンクはいくつかの結び目が互いに交わることなく絡み合ったもの
      • 輪ゴムのような「ほどけている結び目」を「自明な結び目」と呼ぶ
      • リンクは輪ゴムのような円が複数あるときにそれらを3次元空間に置いて、それを平面に投影したもの
      • リンクダイアグラムはその影について、重なりの上下関係がわかるように、下になる線が切れたように描いた図
    • ライデマイスター移動
      • リンクダイアグラムは、線が切れないように、線と線との重なり関係が変わらないように滑らせることで描かれ方が変わる
      • ライデマイスター移動はそんな滑らせ移動の実施パターンのことで3種類ある
    • 無向と有向
      • グラフには無向グラフと有向グラフがあるが、リンクにもある
      • 異なる結び目の間の有向リンクが作る交差点には2種類あり、正の交差点と負の交差点と呼ぶ
      • 絡み数={(正の交差点数)−(負の交差点数)}/2を定義すると、これは整数であって、ライデマイスター移動によって変わらない。リンクに関する不変量である
    • 結び目の合成と分解
      • 2つに分解すると、かならず片方が自明な結び目となるとき、その結び目は「素」な結び目と言う
    • 最小交点数
      • リンクダイアグラムはいろいろに描けるが、交点数を最小に描いたとして、その交点の数をそのリンクの最小交点数と言う
      • 最小交点数をそろえてリンク列挙することができる
      • グラフでノードの数(とエッジの数?)をそろえてそのパターンを列挙できるのと同じようなもの
  • 第3話 組みひもとリンク アレクサンダーの定理
    • 組みひもの両端をつなぐとリンクができる
    • アレクサンダーの定理
      • 『すべてのリンクはある組みひもの両端を閉じたものとしてあらわすことができる』
      • ただし、1対1対応ではない
      • さらに、一つのリンクは、組みひもの本数が異なる組みひもにも対応しうる
      • 異なる組みひもが同じリンクに対応するとき、組みひもに対応する組みひも群の要素の間には、操作が存在して、それを『マルコフの操作』と呼ぶ
      • リンクをある方法で開くと組みひもになる
      • 開くにあたり、リンクダイアグラム上の点と基準に、すべての線の回転方向が同じになるようにしてからその点を通る半直線で開く(回転方向が同じになるようにライデマイスター移動ができるのであるが…)
    • ザイフェルトサークルは有向リンクのダイアグラムの一つ
    • 座位フェルト曲面もそう
      • リンクは表裏の区別のある曲面の教会として表すことができる。この曲面は座位フェルトサークルに対応した何枚かの円板と、それらをつなぐひねりのあるバンドからなる
    • ブレイド(組みひも)指数
      • リンクに対応する組みひものうち、最小組みひも本数のものが必ずあるが、そのひもの本数
      • ブレイド指数とザイフェルトサークルの描き方の方法の数に関係がある
  • 第4話 カウフマンのブラケット多項式ジョーンズ多項式
    • カウフマンのステート模型
      • リンクダイアグラムの交差点を切り開く方法を、線の重なり具合2種に対応して2つ定義し、その切り開き方の組み合わせによって出来上がる2次元平面上の環の数とその相互位置関係が定める模型
      • 切り開き方は数え上げられるから、リンクごとにステート模型も数え上げられる
      • カウフマンのブラケット多項式(ブラケットを使った式で計算されるから、この呼称)
        • すべてのステート模型に関して得られるある値の総和は、リンクの不変量
          • ここでも不変量:いろいろな見方ができてしまうから、なんとか、「確定する値」に落としたい、ということ。ブレイド数もそう、絡み数もそう
    • ジョーンズ多項式
      • 有向リンクについてのカウフマンのブラケット多項式のようなもの(不変量)
      • ジョーンズ多項式は、1変数の多項式だが、その変数の値が1の3つの3乗根のいずれかであるとき、ジョーンズ多項式の値は1になる
      • これは、リンクが3次元の現象だから、その「3」が出てきている????
  • 第5話 組みひもと統計力学モデル
    • 点の生成・消滅過程
      • 生成
        • 組みひもを下から上へと眺めていくと、何もなかったところに点が現れ、それはすぐに2つの点に分かれることがある。これが生成
      • 消滅
        • 逆に2つの点が1つになって消えることもある。これが消滅
      • すれ違い
        • 2点がすれ違う様子は2通りで描ける
      • リンクダイアグラムに対応するグラフ
        • 点の生成・消滅・すれ違いを、それぞれ、ノードと見立てる
        • ただし、ノードは、生成・消滅・すれ違い(男前・女前を区別)ごとにことなるものとする
        • ボルツマンウェイト
          • リンクダイアグラムに対応するグラフのエッジに2状態(+,-)を考えると、スピンの上向き・下向き(イジングモデル)のように考えられる
          • 4種類のノード(生成・消滅・すれ違い2種類)には、そのノードに接続するエッジの+/-パターンで値を与えるものとする。この値の与え方をボルツマンウェイトと言う
          • ボルツマンウェイトを全ノードについて掛け合わせて、そのグラフの値を定める
          • すべてのスピン状態について考えて、それぞれのグラフの値の合算が、リンクダイアグラム(生成・消滅・すれ違い過程)の不変量(統計和・分配関数とも呼ばれる)
    • ブラケット多項式を与えるボルツマンウェイト
    • ライデマイスター移動に関する不変性とヤン-バクスター方程式
    • 分配関数としてのブラケット多項式
    • 組みひも群の行列表現
  • 第6話 ディラックのストリングゲームとベルトのトリック
    • ディラックのストリングゲーム:回転群の2価性
    • 球面組みひもとその自明
    • 群であることがよくわかる
  • 第7話 組みひもと4元数 スピノールの存在
    • 3次元空間での回転に関して演算を可能にする4元数
    • 4元数で考えると、球面組みひもが4元数a+ib+jc+kdの3つのi,j,kが表す3つの軸(正規直交)に関する回転として表せる
    • ちなみに、i,j,k複素数ii^2=-1を満足するように、2回ひねると、ねじれつつも、「つりさげた板は裏側」というような関係に対応する
    • ぐるりと1回転(360度回転)すると元に戻るけれど正負が逆転することを2価表現と言う。このような特徴を持つ共変量をスピノールと。
  • 第8話 パウリのスピン行列 組みひもから4次元時空へ
    • 4元数による移動は、2x2行列の要素に複素数を使うことで扱える
    • 4元数は3次元空間と時間軸とに対応させられる
    • 光の速度を特別視するローレンツ変換(特別視しないのがガリレイ変換)
      • 動いている観測者の時間と静止している観測者の時間の違い
    • パウリのスピン行列
  • 第9話 自由群に作用する組みひも アレクサンダー多項式
    • 組みひもは「具体的」なもの
    • 組みひも群は組みひもの群表現
    • 自由群(Wiki)に対応させることで、抽象的に扱いやすくなる
  • 第10話 組みひもとトーラス
    • トーラス上の閉曲線が絡み合うことで組みひもが作れる
    • 楕円曲線とトーラスの関係
    • 組みひもの作用は楕円曲線の周期としてあらわせる
    • 組みひもの作用を表した行列がモジュラー群
    • トーラスと3本の組みひも
      • トーラスは2つの球面をそれぞれ2点を結ぶ線で穴をあけて、貼り合わせたもの
      • 2つの球面、4つの点で作られた
      • 4つの点のうち、1つは、無限遠点にして、残りの3点のまわりをまわることを考える
      • 点のまわり方は組みひもに対応できる
      • 今、3つの点を回るから3本の組みひもに対応する
      • トーラスで組みひもを考えるときは、3本の組みひものこと
      • 3つの点を基準にして、トーラス上の点を考える
      • トーラスは2つの球面の貼り合わせなので、それぞれの球面に由来する点のペアが、「3点との関係で対称的」
      • トーラスの面は「面」なので「2次元」
      • 「2次元」の座標は、複素数で考えれば、1つの複素数に対応させることができる(複素平面がそう)
      • トーラスの面も複素面で考える
      • 2つの球面に由来するので、「貼り合わせて」ある複素面
      • 貼り合わせたものは「リーマン面
      • トーラス上に3つの点\alpha,\beta,\gammaをとる
      • y,z,\alpha,\beta,\gammaのいずれもが複素数
      • y^2=(z-\alpha)(z-\beta)(z-\gamma)というような関数を作る
      • この式を満足する複素数のペア(y,z)は、一つのzに対して、2つのyが対応する
        • [tex;y=\pm \sqrt{(z-\alpha)(z-\beta)(z-\gamma)}]だから
      • (y,z)を図にしようと思うと、両方とも複素数で、それぞれの位置座標に2次元が必要なので、4次元空間が必要。それはちょっと難しいので、zに2次元(普通の複素平面を与え、yはその実部のみ(虚部のみでもいいが)を割り当てて「見える」ようにすることも可能。そんな絵が、こちら
  • 第11話 組みひも群のモノドロミー表現とタイルばり
  • 付録  結び目のバシリエフ不変量