行列のランク(駆け足で読む統計学のための数学入門30講 19)

  • 第19講 行列のランク


  • p次元ベクトル空間¥bf{R^p}上のn個のp次元ベクトルがあるとする。このn個のベクトルの1次独立な最大数が、q[であるとすると、tex:q\le q]であり、q¥le nであり、n個のベクトルは次元qのベクトル空間¥bf{R^q}を張っている。このとき、pxn行列¥bf{A}のランクrank(¥bf{A})=qと言う
  • ¥bf{A}は、pxn行列なので、n次元ベクトルに左からかけることができる。n次元ベクトル全体に対して¥bf{A}を左からかけてできるベクトルの集合¥bf{M(A)}は、n次元ベクトル全体を元としているが、rank(¥bf{A})=qなので、q次元の部分ベクトル空間に含まれるし、qとpの関係から、p次元空間に含まれる
    • ¥bf{M(A)}=¥{¥bf{y}:¥bf{y}=¥bf{Ax}=x_1¥bf{a_1}+x_2¥bf{a_2}+¥cdots+x_n¥bf{a_n},¥bf{x}¥in¥bf{R^n}¥}¥subseteq¥bf{R^p}
    • このことはpxn行列¥bf{A}を用いて、n次元ベクトル空間上のすべてのベクトル[tex]\bf{x}]をq¥le p次元ベクトル空間上のベクトル¥bf{y}に変換している。これを¥bf{A}¥bf{R^n}から¥bf{R^p}への写像を定めているという
    • n次元からp次元へと次元が小さくなる写像においては、n次元上の複数のベクトルがp次元上の単一のベクトルに写像されることがあり、また、n次元上のゼロベクトルでないベクトルがp次元上のゼロベクトルに写像されることがある。p次元ゼロベクトルに写像されるn次元ベクトルの集合を核(kernel)と呼び、¥bf{K(A)}=¥{¥bf{x}:¥bf{Ax}=0¥}¥subseteq¥bf{R^n}と表す
    • 写像行列のランクとカーネルの次元とには次の関係がある
      • dim(¥bf{M(A)})=rank(¥bf{A})=n-dim¥bf{K(A)}
    • 転置行列・直交補空間を用いると
      • ¥bf{M(A^T)}=¥{¥bf{x}:¥bf{x}=¥bf{A^Ty,y¥in R^p¥}¥subseteq ¥bf{R^n}}
      • ¥bf{K(A)}=¥bf{M(A^T)^{¥bot}}
      • dim¥bf{K(A)}=dim{¥bf{M(A^T)}^{¥bot}
    • 行列ランクの性質
      • rank(¥bf{A})¥le min(p,n) ただし¥bf{A}はpxn行列
      • rank(¥bf{A^T})=rank(¥bf{A})
      • rank(¥bf{AA^T})=rank(¥bf{A^TA})=rank(¥bf{A})
      • rank(¥bf{AB})¥le rank(¥bf{A}),rank(¥bf{AB})¥le rank(¥bf{B})
      • ¥bf{B,C}が正則(相互に逆行列)なときrank(¥bf{AB})=rank(¥bf{AC})=rank(¥bf{A})
      • rank(¥bf{A+B})¥le rank(¥bf{A})+rank(¥bf{B})
      • p次正方行列¥bf{A}について、rank(¥bf{A})=pのとき、¥bf{A}は正則(逆行列を持つ)

[tex:\bf{M(A)}=\{\bf{y}:\bf{y}=\bf{Ax}=x_1\bf{a_1}+x_2\bf{a_2}+\cdots+x_n\bf{a_n},\bf{x}\in\bf{R^n}\}\subseteq\bf{R^p}]
[tex:\bf{K(A)}=\{\bf{x}:\bf{Ax}=0\}\subseteq\bf{R^n}]