λ(ラムダ)



  • 疾患の家族内集積の度合いの指標
    • 疾患が遺伝性を有することの必要条件は、その疾患が家族内集積性を有することである
    • 家族集積性があっても環境要因による場合もあるので、必要十分条件ではない
  • 患者を有する家系における罹患危険率と、一般集団の罹患危険率との比
    • 発端者との血縁関係ごとに計算される
      • 一卵性双生児の¥lambda_{MZ}
      • 同胞の¥lambda_{s}
  • 双生児研究(一卵性・二卵性)・同胞研究・養子研究
    • 遺伝要因と環境要因の分離
      • 遺伝要因:一卵性双生児における遺伝的同一性
      • 環境要因:出生前環境要因・出生後環境要因

多因子遺伝形質(Polygenic)



  • 複数のローカスが関与する
  • 複数のローカスのアレルがランダムメイティングしているとき、かつ、ローカスが相互に独立なとき
    • 複数ローカス複合ジェノタイプは『極端(多重ホモ)』が少ない、正規分布化を示す
    • ジェノタイプとフェノタイプは『平均へ回帰する』
      • 特定のジェノタイプを持つ個人の集団について調べると、その血縁関係者のジェノタイプの分布は、特定個人集団のそれと集団全体のそれとの間になる
      • 特定のフェノタイプを持つ個人の集団について調べると、その血縁関係者のフェノタイプの分布は、特定個人集団のそれと集団全体のそれとの間になる
    • あくまでも、ランダムメイティングが成立している場合に成立するものである

遺伝率(heritability)



  • 多因子遺伝形質の遺伝要因の度合いの指標
  • 集団中の形質の分布は、遺伝要因と環境要因との影響の合算である
  • したがって、形質の分布は、遺伝要因がもたらす形質の分布と環境要因がもたらす形質の分布とに分けられる
  • 今、多因子遺伝形質が上記のような正規分布を仮定できるとき、かつ、遺伝要因と環境要因とが相互に独立であるとき、その形質の正規分布は、遺伝要因による正規分布と環境要因による正規分布との単純な和とできる(正規分布の性質による)
  • 正規分布は平均と分散との2変数によって決められる分布であり、遺伝要因の分散と環境要因との分散も推定可能で、これらの分散の値を用いて、遺伝率(heritability)を算出する
    • 形質全体の分散V_P、遺伝要因がもたらす形質の分散V_G、環境要因のもたらす形質の分散V_Eは次のような式で表される関係を持つ
      • V_P = V_G + V_E
      • 遺伝率(heritability) h^2 = ¥frac{V_G}{V_P}

多因子閾値



  • 多因子遺伝形質は、量的連続分布を示す
  • 多くの形質は、不連続形質(ケースかコントロールか)である
  • 遺伝因子レベルでは多因子であるものが、形質レベルでは不連続形質であるときに、遺伝因子が作る連続分布に閾値があって、その上下で形質が決定されるとする考え方を多因子閾値理論と呼ぶが、その論が用いる閾値のこと
  • 性別の閾値を想定すれば、罹病の性差についてもモデル化が容易
  • 疾患家系と一般集団の遺伝因子正規分布を想定し、同一の閾値を適用することで、ラムダの想定も可能

罹患同胞危険率と遺伝率と発症率



  • 疾患の家族集積性の調査により、集団での発症率・¥lambda_s・遺伝率とが得られる。それらの関係には次のようなことが言える。
    • 遺伝率が高いほど¥lambda_sも高い
      • 同胞間では、遺伝因子の同一性が ¥frac{1}{4} なので、単一遺伝氏病の場合には、遺伝率が1となるが、因子数が1よりも大きいと、遺伝率は1より小さくなり、遺伝子数が多くなると遺伝率・¥lambda_sともに小さくなる
      • 単一遺伝子病の場合には、遺伝率1のラインに乗る
    • ¥lambda_sは、一般集団での発症率との比ととっているのに対し、遺伝率は、発症における遺伝因子と環境因子の強さの比であるから、両者には正の相関はあるが、両者は集団の発症率を介した関係を持つ
      • 発症率が高いほど、同じ遺伝率でも¥lambda_sは小さい

分離比(Segregation ratio)解析



  • 分離比(Segregation ratio)
    • 遺伝性形質が観測される家系における患児の比率のこと。常染色体劣性遺伝形質の場合には ¥frac{1}{4} となる
    • 遺伝様式不明な形質において分離比を解析するということ
      • その意味
        • 非メンデル遺伝形質における、多遺伝子性・少数遺伝子性の弁別、遺伝様式、環境要因の関与などの判定
      • その実行上のポイント
        • Ascertainment bias (家系発症の確認できていない家系における保因者の検出が困難なことなどから来る、バイアスや、また、発症者のすべてが検出され、その家系について調査ができないことから生じるバイアスなどの適正な補正が必要)
        • 複数のモデルに対し、尤度比検定ベースで実施