ぱらぱらめくる『Free Probability and Random Matrices』

Lectures on the Combinatorics of Free Probability (London Mathematical Society Lecture Note Series)

Lectures on the Combinatorics of Free Probability (London Mathematical Society Lecture Note Series)

(PDF)]

Asymptotic Freeness of Gaussian Random Matrices

  • 確率測度
    • 空集合に対して0を返し、全体集合に対して1を返すもの。ある特定値t付近の微小集合のそれは(d \nu (t))と書き、それは、いわゆる「確率密度分布の関数の値」に相当し、\int_{t \in \Omega} d\nu(t) =1であるし、\int_{t_1}^{t_2} d\nu(t)はt1-t2区間の「確率」。この確率測度\nuの期待値は\int_\Omega t d \nu(t)と書けるし、n次モーメントは\int_\Omega t^n d \nu(t)と書ける
  • 特性関数
    • \psi(t) = \int e^{ist} d \nu(s); i = \sqrt{-1} : 変数sが作っている集合上の確率測度\nuについて、tに関する複素関数を定義して、それを変数sの集合で積分したものとする。これは確率測度 \nu(s)が定めるtの関数で、特性関数と呼ぶ
    • t=0のとき\psi(t=0) = \int e^{is \times 0} \nu(s) = \int 1 \times \nu(s) = 1であるから、この連続関数は、0の前後で正の値を取る
    • このtの複素関数は0周りで冪級数展開ができて\psi(t) = \sum_{n \ge 0} \alpha_n \frac{(it)^n}{n!};\alpha_n = i^{-n} \psi^{(n)}(t=0)となる。\alpha_nはn次モーメント
  • キュムラント母関数。特性関数の対数を取る。特性関数は0周りで正なので対数が取れる。\log{\psi(t)} = \sum_{n=1}^m k_n \frac{(it)^n}{n! }+ o(t^m); k_n = i^{-n} \frac{d^n}{dt^n} \log{\psi(t)}|_{t=0}。この係数k_n\nuの(古典的な確率論での)キュムラント
  • モーメントとキュムラントの間には、相互に変換関係が存在する
    • \alpha_n= \sum_{1\cdot r_1 + ...+n \cdot r_n=n;r1...r_n\ge 0} \frac{n!}{(1!)^{r_1}...(n!)^{r_n} r_1!...r_n! } k_1^{r_1}...k_n^{r_n}
    • k_n = \sum_{1\cdot r_1 + ...+n \cdot r_n=n;r1...r_n\ge 0} \frac{(-1)^{r_1+...+r_n-1}(r_1+...+r_n-1)! n!}{(1!)^{r_1}...(n!)^{r_n}r_1!...r_n!}\alpha_1^{r_1}...\alpha_n^{r_n}
  • 一次元標準正規確率変数には特徴がある
    • 一次モーメントは0、二次モーメントは1
    • a_{2n} = (2n-1)!! = (2n-1)(2n-3)...5\cdot 3 \cdot 1a_{2n-1} = 0
    • この(2n-1)!!という値は、\{1,2,...,2n-1,2n\}という集合を2つずつのペアに分ける場合の数になっている
      • そのことは、2n個から、1番を取り出し、その相手方の選び方2n-1通りを考え、残りの2(n-1)個のペアの作り方の場合分けに相当することから|P_2(2n)| = (2n-1)\times |P_2(2(n-2))|=(2n-1)!!という漸化式から示せる
      • ここに、1次元標準正規分布のモーメントが、整数分割・組み合わせと結びついていることが示された
  • 正規分布のモーメント・キュムラントと組み合わせとの関係の導入に引き続き、一般化が以下のようになされる
    • 多次元正規確率変数~正規変数ベクトル
      • いわゆる多変量正規分布。期待値が期待ベクトルになる。それを制御するのが分散共分散行列だったりする。exp^{-t^2}t^2のところも、行列を使って内積を定義することによって、確率変数を行列が支配する色が見えてくる
      • \frac{1}{(2\pi)^{n/2} det(B)^{-1/2}} exp(-(Bt)^T t/2)なる式表記が出るが、これは、原点を中心とした多変量正規分布の分散共分散行列\Sigmaを使った式\frac{1}{(2\pi)^{n/2} det(C)^{1/2}} exp(-t^T C^{-1} t/2)と同じこと
    • 標準複素正規確率変数
      • 2つの独立な実正規乱数X,Yを使ってZ=\frac{X + i Y}{\sqrt{2}}とした確率変数が、標準複素正規確率変数
      • 期待値・平均は、X,Yともに0なので、Zのそれも0+i0
      • 分散はE(Z \bar{Z}) = \frac{1}{2}E(X^2+Y^2)=1となっている
      • さらにE(Z^m \bar{Z}^n) =0 (m \ne n), m! (m=n)
      • Rで確かめておく

    • ランダムな正規行列(GUE: Gaussian Unitary Ensemble)
      • 行列の各成分f_{ij}が複素生起乱数であって、その平均は0、分散E(|f_{ij}|^2)=1/Nのもの
      • f_{ij} = \bar{f_{ji}}と、共役転置でもある
      • 共役転置という制約はあるが、それ以外は、行列の成分の実部・虚部の値は(正規分布制約の下で)独立
      • 対角成分の虚部は0なので、都合、\frac{N(N-1)}{2} + N=N^2個の正規乱数によって行列が決まる。このN^2個の乱数を長さN^2の乱数ベクトルと見ると、多次元正規確率変数と同様の捉え方も可能となる。
      • この長さN^2の正規乱数ベクトルは、N個の平均0、分散1/Nの正規乱数と、N(N-1)/2*2個の平均0、分散1/2Nの正規乱数になっており
      • N^2個の変数同士の共分散は0である
      • したがって、この分散共分散行列の逆行列(対角成分が(N,N,...,2N,2N,...)であって、非対角成分が0の行列)によって指定されるN^2次元正規分布に従う正規変数ベクトルによって定まるランダム行列であることがわかる
      • また、正規変数ベクトルの場合に分散共分散行列が全体を決めていたが、行列の場合には、変数行列の二乗行列のトレースにその性質が備わっているという
      • 具体的には、NxN正規行列は、それを規定する行列B(対角成分が(N,N,...,2N,2N,...)であって、非対角成分が0の行列)を用いて、長さN^2のベクトルとで(Bt)^T tなる内積が決まる。この内積の値は、XをNxN行列として扱ってX^2を計算したときのトレースと比例関係にある
      • したがって\frac{1}{(2\pi)^{n/2} det(B)^{-1/2}} exp(-(Bt)^T t/2)\frac{1}{(2\pi)^{n/2}det(B)^{-1/2}}exp(-Tr(X^2)/2)と行列の二乗のトレースで置き換えて表現できることがわかる
      • Rで確認しておく

      • このあたりの、「行列のべき乗のトレース」を問題にするあたりが、*-代数を使った代数的確率論で、行列を確率変数と見たときの、スペクトルに行列のべき乗のトレースを云々、という話につながる
      • また、隣接行列のk乗の対角成分はk歩でのサイクルの歩き方の場合の数になることなどとも関係してくる。場合の数は、A->Bの歩き方の場合の数と、B->Cの歩き方の場合の数との積がA->B->Cの歩き方の場合の数になったりするから、ペアを作って、それらの積を取る、という処理が歩き方の場合の数の数え上げと関係する
      • 隣接行列と異なるのは、隣接行列の場合には、エッジがあれば1、なければ0というような成分値であるのに対して、正規行列では、平均0、分散1(ないしは1/N,1/2N)というように、「確率変数」になっていること。したがって、「歩き方の場合の数」も数え上げる対象ではなく、「期待値」として取り扱う対象になっていること
  • なお、特性関数・その係数としてのモーメント、キュムラント母関数・その係数としてのキュムラントの間に、組み合わせ関係・組み合わせを用いた分解公式がある(Cumulants_and_moments)があり、また、高階微分組み合わせ論との関係にはWick's theoremというものがあり、量子力学で役割を果たすが、そのことについても、この章では触れられている
    • 多変量正規分布からのn次元乱数があるとする
    • n個から偶数k個を選び出し、k個の変数の値の積の期待値を考える
    • 今、k個(偶数)をk/2ペアに分けるわけ方すべてを列挙する。こうすると、変数ペアごとに、ペア変数の積の期待値ができる。分け方ごとに、この期待値の積を取り、その積を分け方すべてについて足し合わせる。そうすると、k個の変数の積の期待値になると言う
    • Rでやってみる(こちらに、ペア悉皆列挙のやり方を別途、メモ)

The Free Central Limit Theorem and Free Cumulants

  • この先は、ちょっと今の自分には無理。数学的に正しいことが整然と書かれているのはその通りなようだけれど、そのような構成がどういう『意味』を持っているかについての気持ちがついていかないと、「そー、それで」感に押し流される…
  • 何かあるのだろう。正規分布のモーメントが、整数のペアリングと関係しており、ペアリングには、なんでも蟻のペアリングのnoncrossing partitions的なペアリングとがあり、その両者を区別することと、その区別に対応する、確率事象・統計モデルとの区別があるのだろうと思う
  • ここまで書くと、「なんでもかんでも自由に組み合わせたり順列できたりする」か、何かしら制約のある中(Noncrossingがその制約)での自由な組み合わせ・順列の場合とで確率変数のモーメントが変わってくる→分布が異なる→「なんでも自由~正規乱数的」と言っても、制約依存だ、とそういう話、なのだろうと想像される
  • それよりは、整数列の分割がトポロジー的な意味づけができることの方が、幾何には近そうな感じ。特に、曲面の幾何・・・

Free Harmonic Analysis

Asymptotic Freeness for Gaussian, Wigner, and Unitary Random Matrices

Fluctuations and Second Order Freeness

Free Group Factors and Freeness

Free Entropy \chi : The Microstates Approach via Large Deviations

Free Entropy \chi^* : The on-microstates Approach via Free Fisher Information

Operator-Valued Probability Theory and Block Random Matrices

Deterministic Equivalents, Polynomials in Free Variables, and Analytic Theory of Operator-Valued Convolution

Brown Measure