ぱらぱらめくる『非可換確率論における独立性と無限分解可能分布』

  • こちらのpdfを眺める
  • 1 非可換確率論(を読むと、大意は取れるようです…。大意が取れれば良いので、そこで終わりにするかもしれません)
    • 名前の由来
      • 量子力学では、物理量を非可換な作用素として扱う。消滅したり、生成したり、相互作用して変化したりが起きる。それを作用素の積で表現する。その記述に作用素のなす代数〜作用素環が用いられる
      • 量子力学における物理量(位置や運動量)は非可換であり、確率変数として定義される。したがって非可換確率変数と呼ぶ
      • 確率論的な非可換確率変数・非可換確率論の確率論的側面を強調したのが作用素環論
    • ランダム行列
      • 行列は積について非可換であり、行列成分を確率変数としたものは非可換確率変数としての好例になる。確率的な行列と言う意味で「ランダム行列」が研究される
      • ランダム行列は、原子核核子エネルギー準位の記述モデルとしての応用がある
      • 他方、Wishartによる統計・推定理論の側でもランダム行列は研究が始まった。半正定値行列〜分散共分散行列の性質を満たしつつ、ランダムな行列
      • それ以外にも多彩な応用分野があるが、共通して重要なのは、固有値が確率的にどのように分布しているかを調べることが大事であること
    • 自由確率論
      • いわゆる普通の確率変数が2つあって独立な時、可換なので、その期待値の計算は簡単だが、非可換だと簡単にならなくて、ごちゃごちゃしてくる。そんなごちゃごちゃした計算をしないといけない複数の非可換確率変数が独立か非独立かを考えるには、普通の「独立のルール」では判断ができない。それを「自由独立性」と呼び、それを論じるのが「自由確率論」。ちなみに、この自由確率論は、群や代数の自由積と相性が良いので、自由確率論との呼び名がある。
      • 独立性。独立であると言うことを、期待値・モーメントの具合で定めようとするのが古典確率論・代数的確率論の方針だが、そうすると「混合モーメントの計算規則」が「種々の独立性」を定めることと言い換えることができる。その線に沿っていくと、古典独立性、代数的確率論の自由独立性、ブール独立性、単調独立性があることが知られている。
    • 確率論のアナロジー
      • 独立性の定義を変えることで、古典的確率論がその他の確率論に変わる。そうすると、古典的確率論がもつ、色々な要素(フーリエ変換(特性関数)、確率分布のたたみ込み、中心極限定理、Poissonの少数の法則、無限分解可能性、Levy過程、確率積分エントロピーなどの、「その他の確率論用のアナロジー」が定義される。
    • ランダム行列と自由確率論
      • 自由確率論はランダム行列の固有値解析に応用できりることが知られている
      • 漸近的自由な複数のランダム行列の多項式固有値分布を数値的に調べるアルゴリズムなども、ここから導かれているらしい
      • 量子情報理論への応用も活発
    • 他分野への影響
      • 量子群、コクセター群、対称群、ヤング図形、Levy過程上の確率積分、グラフの積演算と隣接行列の関係、グラフの隣接行列のスペクトルの漸近的解析
  • 2 古典確率論とモーメント
    • モーメントは確率変数Xのn乗ごとに定まっていて、二つの古典独立な確率変数の場合、 XよYとのモーメントに分解して計算できることが知られている
    • (X+Y)のモーメントもXのモーメントとYのモーメントに分離した多項式になるし、X+Yの積率母関数が2つの確率変数の積率母関数の積となると言うような関係になっている
  • 3非可換確率論
    • 期待値で定める独立性
      • 古典独立の場合、E[X^{p1}Y^{q1}X^{p2}...X^{pn}Y^{qn}] = E[X^{p1+...+pn}]E[Y^{q1+...+qn}]
      • ブール独立の場合、E[X^{p1}Y^{q1}X^{p2}...X^{pn}Y^{qn}] = E[X^{p1}]E[Y^{q1}]...E[X^{pn}]E[Y^{qn}]
      • 単調独立の場合、E[X^{p1}Y^{q1}X^{p2}...X^{pn}Y^{qn}] = E[X^{p1+...+pn}]E[Y^{q1}]E[Y^{q2}]...E[Y^{qn}]
      • 反単調独立の場合、E[X^{p1}Y^{q1}X^{p2}...X^{pn}Y^{qn}] = E[X^{p1}]E[X^{p2}]...E[X^{pn}]E[Y^{q1+...+qn}]
    • さらに、単項式X^p多項式にしても成り立つ
    • 自由独立性の場合は、簡単な式にならない
      • P_1(x),Q_1(x),...,P_n(x),Q_n(x) \in C[x]E[P_i(X)]=E[Q_i(Y)] = 0 (\forall 1 \le i \le n)を満たすならば、E[P_1(X)Q_1(Y)...P_n(X)Q_n(Y)] = 0
      • また、この定義により\forall P(x),Q(x) \in C[x]のとき、P(X)Q(Y)とが自由独立
      • ただし、C(X)多項式全体を表し、C(x)は関係式の無い単なる文字を現すものとする
      • なんでこんなことをやっているのか、見通しが悪いが、X,Yが自由独立な時に、それぞれの平均値が0となるように変数のシフトを行うと、それらについて、E[P(X)] =E[Q(Y)]=0となり、E[XY] = E[X]E[Y]となると言う、「独立っぽさ」が見えてくる、と言う、そんな定義になっているそうだ