京大医学部と記述統計と『蠅の帝国』
- 作者: 帚木蓬生
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2011/07
- メディア: 単行本
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- 軍医から見た戦時の事象の記録である。
- この本は、複数の章がそれぞれ、エピソードを扱っている。
- 表題作は第2章。これは、広島の原爆投下の後に京大医学部から広島に赴いた医師団の話。
- この医師団は、原爆の翌月に当地を襲った台風による土砂災害で多数の犠牲者を出し、その行動と無念とを祈る行事が、数年ごとに、廿日市にて京大の医学部教員を含む京大関係者の参加のもとに行われているのだが…(2010年度に参加させていただきました(こちら))。
- さて、この本は表題作に限らず、「記述する」ことについてすごいと思う。観察記録として。
- 体に起きたことを記述するには、解剖・生理などの用語が必要になる。そのことを想起しやすい記載となっている。
- そして、医学的な記述は非常に多次元な情報である(相互に異なる観察軸を持つ)ことも読み取れる。
- また、医学的なことは、初めに定性的に表現が可能となり、ついで定量的な表現に移るが、定量的に説明することの情報としての強さ・確かさに関しても、参考になる。
- 医学部教育は、多次元事象を正確に記述するための言葉を学ぶことと、定量的に記述することの力強さを認識させることが一番大事なのではないだろうか。
- それがわかれば、個人の力量に応じて、「必死になって記載」するのがヒトの性だし、「新たな記載表現」を生み出すこともできるから
- この本は、「軍医」「軍医候補者」の手記等を基にして再構成したものなので、その点がリアルである。
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