Preface駆け足で読む『Bayesian Networks and Probabilistic Inference in Forensic Science』
- 何がこの本の動機か、と言えば、以下の質問に答えること
- 原因の集合と科学的証拠の集合との関係はいかなるものか。ただし、通常、原因は観察することができず、科学的証拠は観察できるものである。
- 1つまたは複数の判断すべき命題があったときに、それに関して推定をしたい。その推定を、異なる種類の証拠に基づいて行うと、それらの示す推定結果に違いが生じる。この違いにはどのような関係があるのか、その構造はどのようなものか.
- 科学的証拠の証拠としての価値の大小を定めたいとする。その大小を決める合理的な方法として、わかりやすく、信頼できて、反論されても崩れないようなものはどのように作ったらよいか。
- すでに得られている証拠から十分な確信を持って判断ができないとき、追加で必要な証拠は何なのかはどうやったらわかるか。
- このような追加情報について、その価値をどのように測るのか。
- 刑事裁判において法科学者とその他の参加者が法医学的証拠に関して決定を下すという作業があるが、それを指南するような専門的システム(expert system)は作れるか。
- そのような専門的システムは、新規に得られる関連情報に基づいて更新することが必要になると考えられる。その様な情報とは、新たな情報ソースの出現だったり、新たな判断方法や判断指針だったりする。そのようなメンテナンス・更新は可能か。
- ベイジアンネットワークと上記の動機との関係
- 推論の過程を論理とその順序だてた手続きとして構造化できる
- すべての言葉で語られた情報(narratives)を組み込める
- 証拠や情報が得られると、ネットワーク上のその他の事象や証拠にどのような影響が及ぶかを計算することができる
- 仮説や仮定をすると、どういう風に推定に影響が及ぶかを簡潔に表すことができる
- 議論を仮説・仮定と確率で進めることを可能にする
- 本書の構成・章立てについて
- 総論・基礎
- Chapter 1: 論理と科学的推論の基礎を確認する
- Chapter 2: 論理と推論をグラフ・ベイジアンネットワーク(BN)に表すことを導入し、そのおかげで複雑になっても怖くないことを理解する
- Chapters 3 and 4: 不確かさのある論理と推論に話を進め、BNにおける証拠の意味・位置を知る
- 各論
- Chapter 5: DNAという証拠
- Chapter 6: Transfer evidenceという証拠(現場から犯人へのtransfer,犯人から現場へのtransfer)
- Chapter 7: 証拠の組合せ
- Chapter 8: Pre-assessment 証拠が得られたとしたら、判断にどのような価値を持つかを定量する
- Chapter 9: 質的評価(BNは確率計算を正確に行うが、曖昧さが混じるときに決断しようとするとその正確な計算で表せないことが出てくる。それに対する対処)
- Chapter 10: BNで扱ってきた対象はカテゴリカルな変数であったが、連続変数にする
- Chapter 11: BNとベイズ流の決断とは同じではないので、BNを用いて決断をするとはどういうことか、どのようにBN(とその結果)を使って決定をするか
- 総論・基礎