1 拡散方程式で表す遺伝的浮動



  • 遺伝的浮動とは:記事はこちら
  • 拡散方程式
    • 物理現象・熱力学現象を既述するのに、偏微分方程式が用いられる
    • 拡散方程式は、時間に関する偏微分と空間に関する2階偏微分(と1階偏微分との和)が比例するという方程式で、拡散現象や熱の振る舞いを記述できる
  • 遺伝的浮動の拡散様記述
    • ¥frac{¥partial}{¥partial t}¥phi(x,t)=-¥frac{¥partial}{¥partial x}(M(x)¥phi(x,t))+¥frac{1}{2}¥frac{¥partial^2}{¥partial x^2}(V(x)¥phi(x,t))
    • 言い換える
      • 時間を表す変数と、空間を表す変数とで定められる関数¥phi(x,t)が存在する
        • 時間と空間について異なる値を持っている
        • 時間を表す変数は1つ
        • 空間を表す変数は1つ以上
      • マルコフ連鎖
        • 時間(を表す変数)には向きがある(不可逆性がある)
        • 過去の状態¥phi(x,t-¥delta t)によって、¥phi(x,t)が確率的に定まる
      • 空間中のパターンの変化を定める項

        • 拡散を特徴づける、空間に関する2階偏微分の項
          • この項の係数項(V(x))が正であるとき、関数は時間の経過につれて、空間全体に平坦化する

          • 浮動においては、このV(x)の項に、xの分散を与えることによって、ランダムな¥phiの変化をもたらしている
        • 空間中の移動を特徴づける、空間に関する1階偏微分の項
          • この項の係数項(M(x)が正であるとき、関数は、時間の経過につれて、x軸について正の方向に進行する
          • 浮動においては、このM(x)の項に、選択圧を与えることによって、正の選択圧・負の選択圧・中立性(M(x)=0)を組み込むことができる
          • 下の図では、M(x)>0であるので、-M(x)の項は負となり、上り坂部分で値が減少し、下り坂の部分で値が増加している。そのことによって、波形が前進しているような変化がおきる

2 中立な多型の遺伝的浮動と拡散方程式



  • 拡散方程式は次のようになる。ただし、Nは集団の大きさ
    • ¥frac{¥partial ¥phi}{¥partial t}=¥frac{1}{4N}¥frac{¥partial^2}{¥partial x^2}(x(1-x)¥phi) 、ただし、xは0より大、1より小
    • この拡散方程式の厳密解
      • ¥phi(p,x;t)=¥sum_{i=1}^{¥infty}p(1-p)i(i+1)(2i+1)F(1-i,i+2,2,p)¥times F(1-i,i+2,2,x)e^{-¥frac{i(i+1)t}{4N}
        • ただし、F(x,y,z,w)は超幾何関数(これについてはこちら)
        • 超幾何関数は、この記事にもあるように、無限個の項の和で定義されるが、実は、F(1-i,w,w,w)1-iが効いていて、i=1のときには、項の数が1、i=2のときには、項数2、というようにみかけよりも簡単である。第2項までの近似式はこちら
          • ¥phi(x,p;t)=6p(1-p)e^{-¥frac{t}{2N}}

+30p(1-p)(1-2p)(1-2x)e^{-¥frac{3t}{2N}}

中立仮説のドリフトによるアレル頻度の変化の図はこちらこちら

この図の作成の元となる計算式をトラックするためのエクセルはこちら¥phi(p,x;t)=¥sum_{i=1}^{¥infty}p(1-p)i(i+1)(2i+1)F(1-i,i+2,2,p)¥times F(1-i,i+2,2,x)e^{-¥frac{i(i+1)t}{4N}の式のiにつき、200まで加算している。また、この式で使っている超幾何関数も、多項の和で表されるが、その項も第200項まで加算している。収束の具合などを確認するためには、シート"phi"を開くこと。

3 多アレルの場合



上記記事は、2アレルの場合であった。p,(1-p)というアレル頻度の状態から遺伝的浮動の結果、どちらか片方のアレルに固定される確率過程を扱ったということである。

2アレルでない場合もある。遺伝的浮動は、「存在していたアレルがついに消滅すること」であるとみなすと、多アレルの場合の遺伝的浮動では、次の確率過程を取り扱うことになる。

  • アレル数m_0からアレル数m_tただし(m_t¥leq m_0)に変化するとする。もちろん、各アレルの頻度も変化する。その確率密度は漸近的に次の式で表される
  • 時刻0のときのアレル頻度をP_0=(p_0(1)p_0(2),...,p_0(m_0))とし、時刻tのときのアレル頻度をP_t=(p_t(1),p_t(2),...,p_t(m_0))
    • ¥Large ¥phi(x,p)¥sim (2m_t-1)!¥prod_{when p_t(i)¥not= 0}^{ } p_0(i)e^{-¥frac{m_t(m_t-1)}{4N}}
      • 時刻tのときに存在している(頻度が0でない)アレルの、時刻0のときの頻度がp_t(i)¥not= 0,p_0(i)として記載されていることに留意
  • 参考サイト