var-
- 「遺伝統計学トリビア」の実験中(こちらで、年末年始のため、アクセスがほとんどなくなる時期にこっそりと)
- 科学分野で用いられる術語は一般用語としての意味と区別する必要もあってこんがらがる
- 「名詞」として使っているのか「形容詞」として使っているのかを区別する必要もある
- 「名詞」だとわかっても、その術語は「もの」を表しているのか、「こと」を表しているのかを区別する必要もある
- 科学分野ごとに使い方が異なるのも痛い
- variant,variation,mutant,mutation
- 生物学・遺伝学
- いずれも名詞
- variant,mutantは「もの」を指す名詞、variation,mutationは「こと」を指す名詞
- variantとmutantは「遺伝的に(DNA配列の中に)『普通』と異なっている部分を持つようなタイプ」を指す。「変化してできるもの、変異してできるもの(変異体)」
- variation,mutationは「遺伝的に(DNA配列の中に)『普通』と異なる部分を作る出来事」を指す。また「異なる部分を作る出来事の結果、生じた、異なっている状態(異なっていること)」を指す。また「異なる部分を作る出来事の結果、生じた、異なっている箇所」を指す。「変化すること、変異すること(変異)、変わっている箇所」
- 変異すること・異なっている状態・異なっている箇所をvariationと呼ぶことにしたら、その結果できるタイプはvariant。変異すること・異なっている状態・異なっている箇所をmutationと呼ぶことにしたら、その結果できるタイプはmutant
- variant/variationとmutant/mutationの違い。var-では「違っていること」を中立に捉えようとする意識が働いているのに対して、mut-では『変だ!』『おかしい』というように、「違っていること」に色眼鏡をかけて捉えようとする意識が働いている
- variation,polymorphism
- 遺伝学
- いずれも名詞
- variation,polymorphismは「こと」を指す名詞
- 「この座位はSNP(single nucleotide "polymorphism")だ」のように使うとき、「座位」という「もの」を指して使っているように思える。しかしながら、「この座位はSNPと呼ばれる箇所の集合に属している」というような意味合いである。
- 同一種の遺伝子配列を比較したときに、「(同一種なので大概の箇所は同じなのだが、その中で)違っている箇所」のこと
- variationでは「違っていること」を中立に捉えようとする意識が働いているのに対して、polymorphismでは「違っている箇所をその違いによって集団をタイプ分け」すると、いずれのタイプも『普通』であって、「違っていることが『変で』はないし『おかしく』ない」というような意識が働いている。mutant,mutationが「違っていること」を『取り立てる』ことを意識しているのに対して、それとは逆の意識が働いている
- したがって、polymorphismでは集団内での「違っているタイプ」が占める割合が『小さすぎない』ことを求めることがある(割合に閾値を設定するなど)
- variation,variance,variable
- 数学・統計学
- いずれも名詞
- variationは「『集団』を構成する要素が相互に、一様ではなく、違っている状態(こと)」を指す。また、「個々の構成要素の違いの大きさ」を指す
- varianceは「『集団が』違っている状態を量的に捉えるために定義づけた方法」を指す。varianceはその方法で測られた「『集団の』違いの程度を表す量」も指す
- variableは「(値を)変えられるもの」。数式やモデルの中で異なる値を取らせる「もの」を、日本語では「変数」と呼ぶ
- variableを形容詞で用いれば、「(値を)変えることが可能な、可変の」となる
- variable,parameter