遺伝子と細胞の関係にcoalgebraな双対を考える

  • こちらなどでcoalgebraとかベクトル空間とのその双対空間とかについてメモしている
  • 具体的に遺伝統計学的に考えてみる
  • 今、細胞の集合G=\{g_1,...,g_{ng}\}がある
  • このGの基底とするベクトル空間V_{G}を考える
    • これは個々の遺伝子を単位ベクトルとする基底に関する発現状態を表す空間とみなすことができる
  • 一方、V_Gから、あるベクトル空間V_Cへの線形写像を考える
  • これは、遺伝子の発現状態が定める何か、と考えることができて、それを「遺伝子セットを有し、機能を発言する単位である細胞の機能状態」とみなすことは悪くない喩えである
    • このとき、V^Cは細胞の機能状態を表したベクトル空間であるということになる
  • ここでベクトル空間Vからベクトル空間V^Cへの写像に関して双対空間と線形汎関数のことを思い出すことにする
  • 線形写像の集合Tがあったとき、Tはベクトル空間V^*上の点とみなすことができて
    • T\in V^*: x \in V \to T(x) \in V'とも
    • x\in V : T \in V^* \to t(X)x \in V'とも書ける
    • xとTとの役割・位置がひっくり返せることが双対ということであり
    • V'が一次元実数空間のときには線形Tを線形汎関数と呼び、二次元に上げるとテンソル積やcoalgebraが出てくるのであった
  • ここで遺伝子と細胞の世界に戻れば、細胞の機能状態の空間であるV'は一次元実数空間とみなすには複雑すぎるから、もっと次元の大きな何かしらの空間とする必要はあるだろう。ベクトル空間とみなすことは悪くないように思う
  • その細胞機能状態のベクトル空間への写像は、なんかかんかするとベクトル空間を構成してくれるとしよう(ここは勝手な仮定だが、もし合わなくて、写像がベクトル空間上の点とできなければ、『「ベクトル空間→ベクトル空間」を橋渡しする写像がベクトル空間』というお話の「ベクトル空間」を一般化するとかなんかかんかすることになるのだろうし、それでうまく作れる仕組みは存在するだろう…(数学的にどう扱うのか、扱いやすいのか、とかは今はどうでもよい話)
  • そのとき、この写像が作る空間というときの写像ってなんだろう、ということが問題になる
  • 写像とは、細胞が機能状態を定める『仕組み』のことで、遺伝子セットが同じであって、発現量が同じであるときに異なる発現状態空間に対応付けるとき、その『仕組み』は異なる写像である、という
  • 言い換えると、V上の同一の点から、V'上の異なる点へと移す異なる写像に関する集合がV^*である
  • 細胞Aと細胞Bとがあって、測定する限り同一のV上の点であるけれども、その機能はV'上で異なるとき、細胞Aと細胞Bとは異なる写像に対応する、と言える
  • したがって、遺伝子発現状態から細胞機能状態への写像は「細胞の特性」のことと言えるのだろう
  • 言い換えると、細胞生物学っていうのは、(ものすごく大雑把に言うと)、細胞を単位にして、遺伝子発現状態(など観測可能な空間)から、細胞機能状態(など観測可能なフェノタイプ空間)への写像について考えていることであり、この写像の空間(双対空間だったりするとよいのだが、それがうまくいくかは上述のように要注意)に関して考えることはcoalgebra的な何かだから、coalgebra的アプローチというのはありだろう
  • さらに、細胞を単位にせず、多細胞生物の何かしらの状態と、多細胞生物個体のフェノタイプとに関しても同様に写像空間を考えることもできるのだろう